トラックの「アドブルー(AdBlue)」は、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化するための排ガス後処理システムに使用される尿素水溶液です。
アドブルーは選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction、SCR)システムで使用され、NOx(窒素酸化物)を減少させるために重要な役割を果たします。
これにより、ディーゼル車両が厳しい排ガス規制をクリアすることができます。
しかし、アドブルーやSCRシステムに問題が生じると、トラックのパフォーマンスや排ガスの浄化が適切に行われなくなります。
目次
アドブルー関連の故障でよく見られる問題
アドブルーの供給システムの故障
アドブルータンクからSCRシステムへの尿素水溶液の供給が適切に行われない場合、システムがNOxを正しく減少させることができなくなります。
この問題は以下の原因で発生することがあります。
- ポンプの故障
- ホースの詰まり
- センサーの不具合
- アドブルーの結晶化
アドブルーは適切な温度で保存・供給される必要があります。寒冷地では、アドブルーが凍結することがありますし、逆に高温で保存されると、結晶化してシステム内で詰まりを引き起こすことがあります。特にホースやノズルに結晶が付着すると、供給ラインが詰まり、SCRシステムが正常に動作しなくなります。 - センサーの故障
SCRシステムには多くのセンサーが搭載されており、アドブルーの量や質、供給状況、NOxのレベルを監視しています。これらのセンサーが故障すると、システムが誤った情報を受け取って、アドブルーが不足している、またはシステムが適切に機能していないと判断することがあります。その結果、エンジン警告ランプが点灯したり、トラックの出力が制限されることがあります。 - アドブルーの品質不良
低品質なアドブルーを使用すると、SCRシステムに悪影響を与える可能性があります。アドブルーは非常に純度が高い尿素水溶液である必要があり、異物や汚染物が混入するとシステムが正常に動作しなくなることがあります。 - アドブルータンクのセンサーやヒーターの故障
一部のトラックでは、アドブルータンクにヒーターが装備されており、寒冷地でアドブルーが凍結しないようにしています。このヒーターが故障すると、低温時にアドブルーが固まってしまい、供給が途絶える可能性があります。また、タンク内の残量センサーが故障していると、誤った残量が表示され、補充のタイミングを逃してしまうことがあります。
アドブルー故障時の対策
- 診断機器の使用
トラックには通常、故障時にエンジン警告ランプが点灯します。診断機器を使ってエラーメッセージを確認し、どの部品が故障しているかを特定するのが最初のステップです。 - 定期的なメンテナンス
アドブルーやSCRシステムの故障を防ぐためには、定期的なメンテナンスが重要です。アドブルー供給ラインやタンク、センサーの点検を行い、システムに異常がないか確認することが推奨されます。 - アドブルーの品質管理
アドブルーを補充する際には、純度の高い製品を選び、汚染を防ぐために清潔な環境で作業を行うことが大切です。また、アドブルータンク内に異物が混入しないように注意しましょう。 - センサーやポンプの交換
センサーやポンプが故障している場合は、専門の修理工場で部品を交換する必要があります。特にセンサーの不具合は、トラックの出力制限やエンジン警告灯の点灯など、深刻な問題に発展することがあるため、早期に対応することが重要です。 - 環境に応じた対応
寒冷地では、アドブルーが凍結しないように、タンクヒーターの状態を確認したり、凍結防止のための対策を講じることが必要です。また、高温での保存による結晶化を防ぐため、タンクを適切な温度で管理することも推奨されます。
まとめ
アドブルーの故障は、トラックの排ガス規制に直接関わるため、システムに異常が発生すると重大な影響を及ぼします。
適切なメンテナンスと迅速な修理が重要であり、定期的な点検を行うことで多くの問題を未然に防ぐことができます。