トラックが24Vの電圧を採用している理由は、主に車両の特性や用途に応じた技術的な要件と効率性からきています。
以下にその詳細を説明します。
目次
高出力が必要なため
トラックは大型で重量も重く、乗用車に比べて高い出力を必要とします。
これにより、エンジンの始動や多くの電気機器(ヘッドライト、大型エアコン、冷凍装置など)の動作に大きな電力が求められます。
- 電圧が高いほど電流が小さくなる: 電力(W)は電圧(V)×電流(A)で表されます。同じ電力を供給する場合、電圧を高くすると必要な電流が小さくなります。
例: 12Vで200Wを供給する場合、必要な電流は約16.7Aですが、24Vなら8.3Aです。
電流が小さいと配線の太さを抑えられるため、車両全体の電装系が軽量化・効率化します。
電装品の負担軽減
トラックは多くの電装品を搭載しており、それらを安定して動作させる必要があります。
- 過熱のリスクを軽減: 低電圧で高い電流が流れると、配線が発熱しやすくなります。これを避けるため、電圧を24Vに上げることで発熱を抑え、配線や電装品の寿命を延ばしています。
- 高効率: 高電圧は電力損失(熱や抵抗損失)を抑え、より効率的な電力供給を実現します。
始動時の信頼性向上
大型エンジンを持つトラックでは、スターターモーターが強力である必要があります。
- エンジン始動に必要な電力: 大型ディーゼルエンジンの始動には強力なモーターが必要で、これに24Vシステムが適しています。12Vでは同じ性能を得るために過大な電流が必要となり、バッテリーや配線に過剰な負担がかかります。
業界の標準化
トラック業界では、24Vが標準となっています。この標準化には次のような利点があります。
- 部品互換性: 24V対応のバッテリーや電装部品が容易に手に入るため、整備性が向上します。
- グローバルな共通仕様: 多くの国で24Vトラックが採用されており、国際的な部品流通やメンテナンスが容易になります。
大型トラック特有の装備に対応
トラックは長距離輸送を目的としており、乗用車にはない特別な装備を持っています。
- 大型ヘッドライト: 夜間運行のため、強力なヘッドライトが必要です。24Vはこれらを安定して動作させるのに適しています。
- 補助機器: 冷凍コンテナ、油圧ポンプ、空気圧縮機など、多くの電力を必要とする補助機器が搭載されています。
信号系統や空調システムの互換性
トラックの空調や信号系統は、長距離運転時の快適性や安全性を高めるために特化しています。
- 信号や通信機器: 長距離運転時に必要な通信や安全装置において、24Vはより安定した動作を保証します。
- エアコンや冷房設備: 大型車両のため、これらの設備も高電力が必要で、24Vシステムは効率的です。
なぜ乗用車は12Vなのか?
乗用車は比較的小型で、必要な電力も少ないため、12Vシステムで十分です。
また、コスト面での利点もあり、乗用車に24Vを導入するメリットは少ないとされています。
まとめ
トラックが24Vを採用しているのは、効率性、信頼性、安全性を高めるためです。
特に大型車両特有の高電力需要を満たしながら、配線や電装品の負担を軽減する技術的な利点が大きいと言えます。
この標準化により、世界中でトラックの運用や整備が効率的に行えるというメリットもあります。