トラックのレッカー牽引時に「シャフト抜き」を行う理由は、駆動系のトラブル防止と牽引中の安全を確保するためです。
特に大型トラックや後輪駆動の車両では、シャフト(プロペラシャフト)を抜かないと駆動系に負担がかかり、故障の原因となる可能性があります。
以下で、シャフト抜きの理由や具体的な方法、効果について詳しく説明します。
目次
シャフト抜きが必要な理由
- 駆動系の保護:多くのトラックは、後輪または前後輪のどちらかに駆動力が伝わる設計になっています。この駆動シャフトはエンジンの力を車輪に伝える役割を持ちますが、エンジンが停止しているときに牽引されると、タイヤが回転することで駆動系の部品が無理に動かされ、摩耗や過熱のリスクが生じます。
- トランスミッションへの負担軽減:エンジンが停止している状態でタイヤが回転すると、動力が逆流する形でトランスミッションに負担がかかり、内部のギアやベアリングが過熱・摩耗します。特にオートマチックトランスミッション車では、オイルポンプがエンジン稼働時にしか動かないため、油圧不足による焼き付きが発生しやすくなります。
- 差動ギアの保護:デフ(差動ギア)も無理に動かされると内部のギアが摩耗する可能性があります。シャフトを抜くことでデフが無駄に回転することがなくなり、ギア類の保護につながります。
シャフト抜きの効果と安全性
- 故障防止:シャフトを抜くことで、トランスミッションやデフへの負担がなくなるため、牽引後の修理やトラブルのリスクが大幅に減ります。
- 安全な牽引:駆動系に負担をかけないため、途中で異音やトラブルが発生しにくく、牽引が安全に行われます。
- 修理費の削減:駆動系の部品交換やトランスミッションの修理は非常に高額です。シャフト抜きによりこれらの損傷を防げば、修理費を削減できます。
シャフト抜きの方法
- プロペラシャフトの取り外し:通常、後輪駆動のトラックでは、リアアクスルからプロペラシャフトを取り外します。これにより、車両は駆動系から切り離され、タイヤの回転がエンジンやトランスミッションに影響を及ぼさなくなります。
- 抜いたシャフトの固定:シャフトを取り外した後は、パーツが損傷しないようにしっかりと保管、固定します。また、再装着する際に正確な位置で取り付けることが重要です。
- 牽引準備:シャフトを抜いた後、レッカーに適した状態で牽引を行います。これにより、駆動系に負荷をかけず、円滑な牽引が可能になります。
シャフト抜きの必要がないケース
- 前輪駆動車:後輪が駆動しない車両(前輪駆動車やFF車)は、後輪を地面に接した状態で牽引できるため、シャフト抜きが不要です。
- 四輪駆動車:四輪駆動車は特殊な構造を持つため、車両によってシャフト抜きが不要なケースもありますが、その場合でも、特定の牽引方法や適切な設定が必要です。
- 短距離移動:ごく短距離の牽引であれば、シャフト抜きが必要ない場合もありますが、それでも駆動系への影響を考慮する必要があります。
シャフト抜きを行わない場合のリスク
- トランスミッションの焼き付き:油圧不足の状態で無理に駆動系が回転すると、オートマチックトランスミッションは特に焼き付きのリスクが高く、最悪の場合、修理が不可能になることもあります。
- 駆動系の摩耗と損傷:シャフトを抜かずに牽引すると、駆動系全体に大きな摩耗や負荷がかかり、後の修理に時間と費用がかかります。
- 牽引中の事故リスク:牽引中に部品が破損したり、異音が発生することで、牽引作業自体が危険になる可能性もあります。
まとめ
トラックのレッカー牽引時にシャフト抜きを行うのは、駆動系やトランスミッション、デフを保護し、安全に牽引するための重要な処置です。
特に大型トラックや後輪駆動車、オートマチックトランスミッション車では、これを怠ると修理費用や作業上のリスクが増大します。