トラックのエンジンブレーキとフットブレーキは、速度の調整や制御に使用される重要な機能ですが、その仕組みや効果、使い方には大きな違いがあります。
両者の特徴を理解することで、適切なブレーキ操作が可能となり、安全で効率的な運転が実現できます。
以下で、それぞれのブレーキについて詳しく説明します。
エンジンブレーキとは
エンジンブレーキは、アクセルペダルを離したときに発生する自然な減速力を利用した制御方法で、エンジンが回転しながら抵抗となって速度を減少させる仕組みです。
エンジンブレーキは、「排気ブレーキ」や「ジャストリターダー」などとも呼ばれることがあります。
エンジンブレーキの仕組み
- アクセルを離すと、エンジンへの燃料供給が減少します。この状態では、エンジンが圧縮する際に抵抗が生じ、速度が自然に減少します。
- さらに、トラックの場合は、排気バルブを閉じることでエンジン内の圧縮力を増加させ、制動力を高める「排気ブレーキ」が組み込まれていることもあります。
エンジンブレーキの特徴
- 効果:エンジンブレーキは、主に「エンジンの抵抗」による減速力を利用するため、フットブレーキと比べて制動力は弱いです。しかし、エンジンブレーキは継続的に使用でき、フットブレーキの摩耗を抑える効果があります。
- 用途:緩やかな下り坂や長い距離の減速で使われることが多いです。エンジンブレーキを活用することで、フットブレーキの過熱を防ぎ、ブレーキ性能の低下(フェード現象)を抑えることができます。
フットブレーキとは
フットブレーキ(サービスブレーキ)は、一般的なブレーキペダルを踏むことで車輪に直接制動力を与える方法です。
トラックにはエアブレーキが装備されている場合が多く、空気圧を利用して制動力を発生させます。
フットブレーキの仕組み
- ブレーキペダルを踏むと、トラックのエアブレーキシステムが作動し、ブレーキキャリパーがブレーキディスクやブレーキドラムに圧力をかけ、摩擦によって車輪を制動します。
- エアブレーキは空気圧を利用して作動するため、油圧ブレーキに比べて制動力が強く、大型車両に適したシステムです。
フットブレーキの特徴
- 効果:エアブレーキを使用することで、強力な制動力を得られるため、急停止や緊急時のブレーキとして有効です。
- 用途:停止が必要な場面や急な減速が必要な場合に使用されます。しかし、頻繁に使用すると摩耗や過熱によって制動力が低下する「ブレーキフェード」が起こるリスクがあります。
エンジンブレーキとフットブレーキの主な違い
特徴 | エンジンブレーキ | フットブレーキ |
---|---|---|
制動力 | 弱い(減速効果が少ない) | 強い(急停止や急減速に有効) |
摩耗の影響 | なし | あり(頻繁な使用でブレーキが摩耗) |
使用場面 | 長い下り坂や徐々に減速したい場面で使用 | 急停止や短い距離での停止に使用 |
過熱のリスク | 低い | 高い(長時間の使用でフェード現象) |
トラック特有の装備 | 排気ブレーキ、ジャストリターダーなど | エアブレーキ |
エンジンブレーキとフットブレーキの使い分け方
長い下り坂での減速
トラックのような大型車両は、長い下り坂を走行するとフットブレーキが過熱しやすく、制動力が低下するリスクがあります。
このため、エンジンブレーキを主体として速度を制御し、必要に応じてフットブレーキを補助的に使用するのが理想です。
排気ブレーキを併用することで、エンジンブレーキの制動力が増し、より安全に下り坂を走行できます。
停車時や急な減速が必要な場合
フットブレーキを使用して車両を迅速に停止させます。
急ブレーキが必要な場面や予期せぬ障害物がある場合、フットブレーキを使用することで迅速な制動力が得られます。
トラックにおけるエンジンブレーキとフットブレーキの安全性
- ブレーキフェード現象の回避:長い下り坂や負荷のかかる場面でフットブレーキを連続使用すると過熱してブレーキの効きが悪くなる「フェード現象」が発生します。エンジンブレーキを活用することで、フットブレーキの使用を最小限に抑え、フェードを防止できます。
- ブレーキの摩耗を抑える:エンジンブレーキは摩擦を伴わないため、フットブレーキの摩耗を抑えることができます。トラックのフットブレーキは、交換や整備に費用がかかるため、エンジンブレーキを使うことで経済的なメリットがあります。
- 速度調整がしやすい:エンジンブレーキを使用することで、急ブレーキを避けつつ徐々に減速が可能となり、乗員の安全性や快適性が向上します。
まとめ
エンジンブレーキとフットブレーキは、トラックの運転でそれぞれ異なる役割を持っています。
エンジンブレーキは、下り坂や緩やかな減速で使用し、フットブレーキは急停止や短距離での減速に使用することで、ブレーキシステム全体の負担を軽減し、安全で効率的な運転が可能です。