キッチンカー(移動販売車)を営業するには、さまざまな許可や届出が必要です。
地域によって若干の違いがあるものの、一般的に日本国内でキッチンカー営業を始める際に必要な許可を詳しく説明します。
営業許可(食品営業許可)
保健所の許可
キッチンカーで食品を販売するには、各自治体の保健所で「食品営業許可」を取得する必要があります。
これは、食品衛生法に基づいて定められているため、全国共通で必要な許可です。
取得の流れ
- 営業許可の申請
- キッチンカーの所在地(主に活動する地域)の管轄の保健所に申請を行う
- 提出書類を準備する(後述)
- 車両の設備確認
- キッチンカーが保健所の基準を満たしているか審査される
- 食品衛生責任者の設置
- 営業者は食品衛生責任者の資格を持っているか、もしくは資格を持った人を配置する必要がある
- 施設検査(実地調査)
- 保健所職員がキッチンカーをチェックし、基準を満たしているか確認
- 営業許可証の発行
- 問題がなければ、営業許可証が発行される
許可取得に必要な設備要件
保健所の基準を満たすために、キッチンカーには以下の設備が必要です。
- 給水タンクと排水タンク(原則40L以上が望ましい)
- 手洗い用シンク(水道設備)
- 食品を適切に保存する冷蔵・冷凍庫
- 衛生的な調理台
- 害虫やほこりを防ぐための扉や窓の設置
- 換気設備
- ゴミ箱の設置
※詳細な要件は各自治体で異なるため、保健所の担当者に確認することが重要です。
提出書類
- 営業許可申請書
- 施設の平面図
- 取り扱う食品のメニュー表
- 食品衛生責任者の資格証明書(講習を受けることで取得可能)
- 水質検査成績書(井戸水を使用する場合)
- 申請手数料(自治体によって異なるが概ね1万5,000円〜2万円程度)
道路使用許可
警察署への申請
営業を行う場所が公道に面している場合は、管轄の警察署で「道路使用許可」を取得する必要があります。
道路交通法に基づいて許可が必要で、特に歩道や車道の一部を占有する場合に求められます。
申請に必要な書類
- 道路使用許可申請書
- 営業場所の地図・写真
- キッチンカーの車両情報
- 営業内容の詳細(販売品目・時間など)
- 申請手数料(1,500円〜2,500円程度)
許可の条件
- 交通の妨げにならないこと
- 近隣住民の迷惑にならないこと
- 一定の時間帯のみ営業可能(自治体により異なる)
自治体の営業許可(場所による)
キッチンカーを営業する場所によっては、自治体からの特別な許可が必要になることがあります。
例えば、公園や広場、イベント会場などの公共スペースでは、「占用許可」や「公園使用許可」を申請する必要があります。
許可が必要な場所の例
- 公園・広場 → 公園管理者(市区町村など)の許可が必要
- 駅前や公共施設周辺 → 管轄する自治体の許可が必要
- イベント出店 → イベント主催者の許可を得る
申請に必要な書類
- 営業許可証のコピー
- 車両の詳細情報(ナンバー・大きさ)
- 販売予定の商品リスト
- 利用申請書(自治体ごとに異なる)
消防法に関する届出
キッチンカーではガスボンベや発電機を使用する場合が多く、それらを安全に管理するため、消防署に「防火管理の届出」を行うことが求められます。
届出が必要なケース
- プロパンガス(LPG)を使用する場合
- 発電機を使用する場合
- 炭火やオープンフレーム(直火)を使用する場合
申請方法
- 営業地の管轄消防署に「防火対象物使用届」を提出
- 必要に応じて消火器を設置
- 消防署の指導に従い、安全対策を実施
営業ナンバー(黒ナンバー)の取得(必要に応じて)
キッチンカーが自家用車扱い(白ナンバー)の場合でも、有償で食品を運搬する業務が発生する場合は、営業ナンバー(黒ナンバー)の取得が必要になることがあります。
特にフードデリバリーと組み合わせる場合や、移動販売をしながら他の場所へ食品を配送する場合は、貨物軽自動車運送事業の届け出が必要になります。
申請先
- 運輸局(国土交通省)
必要書類
- 営業計画書
- 車両情報
- 運行管理者の登録
事業の開業届(税務署への届出)
キッチンカーを開業する場合は、税務署に「開業届」を提出し、個人事業主として登録する必要があります。
必要書類
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- 青色申告承認申請書(青色申告を利用する場合)
提出先
- 管轄の税務署
その他の注意点
- 車両保険の加入(火災・事故対応)
- PL保険(生産物賠償責任保険)への加入(食中毒や事故対応)
- ガス・電気設備の安全管理(定期的な点検)
まとめ
キッチンカー営業に必要な許可は以下の通りです。
- 食品営業許可(保健所)
- 道路使用許可(警察)
- 自治体の営業許可(公園・広場など)
- 消防署への届出(ガス・発電機)
- 営業ナンバーの取得(黒ナンバー・運輸局)
- 開業届の提出(税務署)
営業する地域や販売スタイルによって異なるため、事前に自治体や保健所に相談することが重要です。