キッチンカー（移動販売車）に関して「やめとけ」と言われる理由はいくつかあります。
成功するキッチンカーもありますが、多くの人が困難に直面するため、事前に慎重な検討が必要です。
以下、経営・営業・法律・心理的負担の観点から詳しく解説します。
経営面の難しさ
キッチンカーは開業資金が比較的少なく済むため参入障壁が低いですが、継続的な経営が難しいと言われています。
初期投資が意外に高い
「キッチンカーは安く始められる」と思われがちですが、実際にはそれなりの初期費用がかかります。
- 車両購入費：中古でも150万～300万円、新車なら500万円以上
- 改装費用：衛生基準を満たすために50万～150万円
- 設備費用：調理器具や発電機、冷蔵庫などで50万～100万円
- 開業資金合計：最低でも200万円～500万円程度が必要
加えて、営業場所の確保やメニュー開発にもコストがかかるため、資金計画が甘いとすぐに経営難に陥ります。
ランニングコストが高い
固定店舗に比べると家賃はかかりませんが、それでも以下のコストがかかります。
- 駐車場代：営業外の保管場所（1万～5万円/月）
- ガソリン代：移動が多いため1万～3万円/月
- 食材費：原価率30～50%が一般的
- 営業許可費用：自治体ごとに異なり、毎年更新が必要
- 設備メンテナンス：車両・発電機の修理費が発生する
天候や季節の影響が大きい
- 雨の日・風が強い日：売上が激減
- 夏場：炎天下の営業で体力的にきつい
- 冬場：人通りが減るため売上が下がる
- 台風・豪雨：営業不可の日が増える
このように、天候次第で収益が大きく変動するため安定しにくいのが大きなデメリットです。
売上の見込みが甘くなりがち
例えば、1日5万円の売上を想定していても、実際には以下のような要因でうまくいかないことがあります。
- 立地選びを間違える（人が来ない）
- 競合が多く、目立たない
- 知名度が低く、最初は売れない
現実的には、1日2万円前後の売上が一般的とされ、利益を確保するには相当な回転率が必要です。
営業面の課題
キッチンカーは営業場所の確保が難しく、自由にどこでも販売できるわけではありません。
良い立地を確保するのが難しい
- 公道での営業は基本NG（道路交通法により許可が必要）
- 商業施設やイベント会場の枠が限られている
- 人気の場所は競争率が高く、初心者は入りにくい
- 固定店舗の反発を受けることもある
移動販売の営業許可が複雑
キッチンカーは営業する自治体ごとに許可が必要であり、以下のような手続きが求められます。
- 保健所の営業許可（都道府県ごとに違う）
- 販売場所ごとの許可申請
- 火器使用許可（プロパンガスなど）
- 道路使用許可（公道で営業する場合）
特に、県をまたぐと許可が通用しないケースがあり、広域で営業する場合は手続きが煩雑になります。
法律・規制の影響
キッチンカーは法規制が厳しく、事前に細かいルールを把握する必要があります。
食品衛生法の制約
- 保健所の基準を満たした設備（シンク、冷蔵庫、給水タンクなど）が必要
- 自宅で調理したものを販売するのはNG（必ず営業許可のある場所で調理）
税金・会計管理が大変
- 個人事業主としての確定申告が必要
- 消費税の納税義務（売上1,000万円超え）
- 売上が不安定なため税金対策が難しい
心理的負担
キッチンカーは個人での運営が多く、精神的な負担が大きいビジネスです。
体力的にきつい
- 朝早くから仕込みが必要
- 長時間立ち仕事が基本
- 猛暑や寒波の中でも営業しなければならない
孤独な仕事になりやすい
- 一人で営業することが多い
- 売れない日は精神的に辛い
- トラブル（故障・クレーム対応）も一人で解決する必要がある
SNSマーケティングが必須
- 知名度を上げるためにSNSで発信する必要がある
- 競合が多いため、独自性を出さないと埋もれる
- 「美味しいだけ」ではなく、「話題性」が求められる
成功するためには？
キッチンカーで成功するには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 立地戦略を徹底する（競合調査、ターゲット分析）
- メニューの差別化（インパクトのあるメニュー開発）
- 原価管理を徹底する（利益率を意識）
- 天候リスクを考慮する（天候に左右されない戦略）
- SNSを活用する（知名度を上げる）
- イベント出店を活用する（売上を安定させる）
結論：キッチンカーは「簡単に儲かる」わけではない
キッチンカーは自由で楽しそうなイメージがありますが、実際には経営・営業・法律・心理的負担の面で多くのハードルがあります。
そのため、安易に参入すると撤退を余儀なくされるケースが多く、「やめとけ」と言われることが多いのです。
成功するためには、事前のリサーチと戦略が不可欠です。
特に売上が不安定になりやすいことを理解し、継続的に利益を出せる計画を立てることが重要です。
